世界最古の客船「ドゥロス」
2000年7月25日

タイタニック号と同年代に建造され、現在世界最古といわれる客船「ドゥロス」が名古屋に寄港したので、その様子を紹介します。
「ドゥロス」は客船として登録されていますが、一般の船客を乗せて旅するのではなく、ドイツのキリスト教慈善団体GBA(Good Books for All)が運行し、50万冊の本を積んで世界各国を回り、各港で本の販売や、慈善活動を行う船です。1978年の運行開始以来87カ国、400以上の港に寄港し、名古屋港には4年前にも寄港しています。

DOULOS (マルタ共和国船籍)
1914年 米国建造
6804 総トン
全長:130.35m 全幅:16.60m 喫水:6.50m

今回の寄港では、船上書店の営業だけでなく、案内付きの船内見学ツアーや、船上ライブ、乗組員との交流会などの各種イベントが開催されました。私は、これらイベントのなかの「ガイド付き船内ツアー」に参加し、船内の見学をしました。
「ガイド付き船内ツアー」では、1時間弱で船内を案内してもらいながら、船内生活についての説明を受けます。案内してくれたのは高校を卒業後、2年間の予定で乗船している日本人女性で2ヶ月後に下船予定とのこと。この船には35カ国、300人の乗組員が乗船していますが全てボランティアで、全員が船内での仕事を与えられ、船の運行と書店の運営を行っています。夫婦や家族で乗船している人もあり、船内には学校もあります。

狭くて最小限の機器しかないブリッジ
8100馬力のディーゼルエンジン

最初にブリッジを見学しましたが、その狭さに驚きました。また前方の窓が小さく高い位置にあるので、私の様に身長の低い人間には見晴しが良くありません。中央の羅針盤がやけに目立つだけで、機器類も必要最小限の物しかありません。

エンジンは1970年に換装された中速ディーゼルエンジンですが、それでも30年経っていることになります。エンジンルームは船の中央部にあり、上甲板の明かり取りの窓から見降ろせる位置にあります。

食堂は食事をとるだけでなく、乗組員の憩いの場として利用されているとのこと。ただ、床にはキャンバーがついていて、天井が低いので圧迫感があります。また、空調などの出っばりがあるので、背の高い人は首を傾けなければならないかもしれません。4年前の来港時にも船内を見学した人の話では、その時と比べて食堂が明るくきれいになったとのこと。船全体としては、デッキなどの外観は古さが目立ちますが、船内は度々改装されているようで、86才を感じるところはありません。船内の通路に「今週のメニュー」が貼り出されていましたが、その横に何故か客船「フランカC」時代の汚れて破れたメニューが貼られていました。

洗濯室は船尾下方にあります。デッキに並べられた、大きなバケツに入った洗濯物の列に生活観が感じられ、一般の客船との違いを実感しました。

本売り場から前方を見る
明かり取りの窓(左)からエンジンルームが見下ろせる

ドゥロス号は建造後3回名前が変わり、その度に大きな改造がなされています。

◆メデイナ(MEDINA)1914年〜
ドゥロス号は、米国で貨物船「メディナ」(蒸気船)として建造されました。ニューヨークからテキサスへの初荷は玉ねぎだったとのこと。
◆ローマ(ROMA)1945年頃〜
イタリアで客船に改造され、ローマカトリックの聖年1950年にはローマ巡礼者を運び、その後はヨーロッパからオーストラリアへの移住者を運びました。
◆フランカ・C(FRANCA・C)1952年〜
イタリアのコスタラインに売却され、「フランカ・C」に改名され、この時ディーゼルエンジンに換装されました。その後1959年に大改装されて現在とほぼ同じ外観となり、1970年に現在のディーゼルエンジンに換装されました。
◆ドゥロス(DOULOS)1977年〜
廃船予定だった「フランカ・C」にちょうど乗り合わせたGBAが廃船の話を聞き、船の購入を決定しました。ギリシャ語で「召し使い」を意味する「ドゥロス」と改名され、現在に至っています。

名古屋港ガーデン埠頭の「ドゥロス」

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