2013日本クルーズ&フェリー学会講演会
(2013/10/26)

日本クルーズ&フェリー学会 講演会 
(於:大阪府立大学)

過去の「日本クルーズ&フェリー学会」の講演会概要


日本クルーズ&フェリー学会の講演会が開催されました。 70人を超える参加者でした。

講演内容(要約)
(1)東アジアにおける現代クルーズの成長 
@現状とその将来

池田良穂(大阪府立大学)
日本のクルーズマーケット開発
@外国船による日本発着クルーズ:RCI、日本の旅行会社のチャーター
A外国船による日本発着で日本を巡るクルーズ:プリンセス
・外国人にも人気、日本の地方都市を回れるクルーズ
Bインターポーティング日本寄港クルーズ:コスタクルーズ
・RCIは日本人と中国人の混載には消極的
C日本籍クルーズ客船への影響
・メリット:全体的なマーケットの拡大、日本船の予備軍を増やせる
・デメリット:価格差による日本船乗船客の減少
・2013年はメリットの方が表れている。
Aプリンセスクルーズのアジアクルーズ

泉 隆太郎
(カーニバルジャパン大阪事務所) 
2013年のクルーズ
・10万トン客船では集客に不安。3万トンでは採算とれない。結果7万7千トンのサンプリンセスに決まった。
・60才以上82.35%、50才〜59才8.53%。GWのクルーズは家族連れで若い世代の乗船もあったが、その他のクルーズは高齢者が多かった。高齢者予備軍の乗船は少なかった。
・乗船客の6割が外国客船が初めて。
・外国人の集客は良かった。日系人の乗客、ロシア人の乗客も多かった。
2014年の予約は好調。
・大都市在住者の予約は早く、地方都市は遅い。クルーズに対する知識の違いが現れている
・ダイヤモンドプリンセス、サファイヤプリンセンスは就航10周年にあたり、記念イベントを考えている。サンプリンセスを含め3隻が集まる。
・関東、関西でCMを多く流している。今は投資の時期。
旅行会社対策
・乗船客の外国船についての知識が少なく、小規模旅行会社に対するクルーズ教育が重要。
・クルーズアドバイザー制度は一定の効果はあるが、会社からの指示による取得が多く、積極的でない。
Bロイヤルカリビアンの東アジア戦略と日本発着クルーズ

糸川 雄介(ミキツーリスト)
インターナショナルマーケットの強化
・ロイヤルカリビアンの2007年のマーケットは北米:その他=7:3であったが、2011年は北米:その他=5:5となった。
・アジアのクルーズマーケットは140万人(中国80万、日本20万)、2020年には、400万〜1000万になると予想。
日本発着クルーズ
・2010年 レジェンド 3600人、2012年 レジェンド 14000人 2013年 ボイジャー 9000人。 
販売施策
・全てのクルーズはインターナショナルで販売するが、日本人と外国人の船客の割合を考慮して集客
・日本発着クルーズの料金は固定制だが、近い将来変動制に移行と予想。
Cホーランドアメリカライン、コスタクルーズとアジアマーケット

久野 健吾
(オーバーシーズトラベル) 
ホーランドアメリカラインのクルーズ
・リピータ率が高い(100%リピータのクルーズもあり)。10万トン以上の客船は作らない。
・カリブ海のプライベートアイランド(ハーフムーンケイ)は人気ランキングトップ。
・日本発着クルーズの予定はない。
コスタクルーズ
・乗船客の年齢 〜34才:28%、〜44才:14%、〜54才:18%、〜65才:19%、56才〜:21%、
・小型客船(4〜5万トン)のネオシリーズ就航、特色を持ったクルーズ。ワールドクルーズは130万円から、予約が取りにくい。
・ヨーロッパのクルーズは、公用語5ヶ国語、言葉の壁のないエンターテイメント。
DHISグループのクルーズ戦略

小林 敦(クルーズプラネット)
クルーズプラネットはHISのグループ会社としてクルーズを専門に取り扱う。チャータークルーズと日本発着クルーズはHISでも販売。
2013コスタビクトリアのチャータークルーズ
・14000人を集客。 GWのクルーズは成功だったが、夏のクルーズはそうでもなかった。 人気間違いなしと思ったクルーズが不人気であったりして予想が難しい。
・クルーズ初めての乗船客が59%。 年齢は70代26%、60代31%、50代13%
・アンケート調査結果からは必ずしも満足度は高くなかった。「日本発着クルーズなら次回乗船」の答えが多かった。
2014年のチャータークルーズ
・コスタビクトリアとフォーレンダムのチャータクルーズを実施。フォーレンダムは日中関係の悪化で、チャーターでないと日本に寄港しないおそれもあった。
(2)おもてなしの神髄を極めた日本籍クルーズ客船 
@にっぽん丸のクルーズの魅力

山口 直彦(商船三井客船)
差別化により外国船と共存
@食のおもてなし(有名シェフとのコラボ)
・食材費は海外船の4〜5倍
A造り込んだテーマ設定
・船上オペラや歌舞伎上演
Bチャレンジングな航路設定と寄港地
・小型船の特徴を活かす
・日本ではフライ&クルーズは旨くいっていない。
・複数クルーズの連続乗船のコースを設定。
乗船客の年齢 平均63才(2012年) 男性4割:女性6割
Aぱしふぃっくびいなすのクルーズの魅力

東山 満(日本クルーズ客船)
フレンドシップのおもてなし
・参加できるイベント、一緒に楽しめるイベント
・お客様と乗組員の最適な距離感を目指す
2013年のクルーズ
・外国船寄港により良い効果が出ている:上期20%UP,下期10%UP(見込み)
・台風の影響大きかった(3クルーズ)
乗船客の年齢 日本一周の場合、平均73〜74才
BIRクルーズ企画

下田大介、北川涼太
(電通) 
・IR=カジノを含む統合型リゾート
・クルーズは統合型リゾートの機能を持ったエンタティメントシティ
・大阪IR完成まで、クルーズシップを社会実験として活用
(3)クルーズ客船を迎える日本の港湾
@巨大客船の離着岸の実態
 〜船長の何倍の港湾スペースが必要か〜

小菅 雄紀(大阪府立大学) 
大型船の出入港及び航行に拘わる規制
・1L2L規制(航路は船の全長分必要、回頭水域は船の全長×2必要という規制)
・水先引き受け基準(風速)
・タグボートの使用基準
・巨大船の瀬戸内海夜間航行規制
検証目的
・ポッド推進器や高出力のスラスタを装備したクルーズ客船の操船性能の実態を把握し、それに見合った規制のあり方を提言する。
調査結果
・大型クルーズ客船の回頭に必要なスペースは直角方向 船長の1.22倍、法線方向は船長の1.2-1.6倍
・クルーズ客船に必要な回頭スペースは大型コンテナ船の約60%
(4)新造客船を見る
@LNG炊きエンジン搭載の大型フェリーの現状
 6万トンのクルーズフェリー「バイキンググレース」乗船記

池田良穂、小菅 雄紀
(大阪府立大学) 
・LNGタンクを船尾デッキに搭載。 エンジンコントロール室では燃費計を表示して常に船員にコスト意識を持たせる。
・LNGの供給は、接続5分、チャージ20分。 タンクは常に50%以上にするよう規制されていて、6回/週 チャージしている。
・LNGの気化熱を利用して、旅客区画の空調に利用。
バイキンググレースの航路
・スエーデンのストックホルムとフィンランドのトゥルクを結び、途中多島海(アーキペラゴ)を航行。
・免税品販売(含む酒類)のため、EU圏外の島に途中寄港。 深夜寄港はボラードに舫いを掛けて、直ぐ外して規制をクリア。
(5)フェリーの省エネ化
@フェリーの最新技術動向について

大西克司、三好翔太
(三菱重工業) 
@三菱重工の建造実績:1987年大型フェリーの建造開始以後67隻建造、5000トン以上ではシェア70%
A省エネへの取組:1987年建造船に比べ2010年は20%UP @推進効率 A貨物スペース B電力
B推進プラントの最適化:2機1軸(さんふらわあ ごーるど 船体抵抗の低減)、CRPポッド推進(フェリーはまなす 13%省エネ(対従来船)、港内操縦性能UP)
C復元力回復装置:損傷時の復元性向上、貨物搭載量を減じることなく安全性を確保
A小型高速旅客船の実船計測と運航手法による省エネ化

平田宏一
(海上技術安全研究所)
目的:省エネ運航、整備のマニュアル作成、小型船の設計、改良に役立つマニュアルを作成
省エネの手法、課題:@減速 A軸発電 B陸電の利用 C新技術導入 D運航状況の見える化
(6)世界最大客船「アリュールオブザシーズ」の印象

梅田 直哉(大阪大学)
梅田 淳子
万歩計で船内での動きを測定:終日航海日7100〜7900歩(にっぽん丸乗船時 11000歩)、寄港日11500〜15000歩
船内有料ツアーに参加:150$,参加者18名、ギャレー、エンジンルーム、ランドリー、ブリッジなどを見学。
ブリッジ後方に損傷時に船長が詰めるSAFETY CENTERが設置されていた。
(7)ユーザ視点でクィーンエリザベスを考える

堀江 珠喜(大阪府立大学)
QEは、船客・船会社・乗組員が待望した船だった。 進水式では「この船でガッポリ稼ぐ」と社長が宣言。
乗船すると期待外れが多かった:乗船案内書類の一部省略、キャビンの調度品の簡素化・使い憎いレイアウト、カジュアル化を感じる出来事、娯楽施設のレイアウトの悪さ
女性乗船客の重要性:キュナードの上得意は女性。女性の心を宝石、和服からクルーズに向ける努力が必要。


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