名古屋港の魅力づくりシンポジウム
(2016/9/10)



名古屋港で「クルーズ船の寄港促進に向けた名古屋港の魅力づくりシンポジウム」が開催されたので参加しました。

開会 主催者挨拶

国土交通省中部地方整備局
副局長 守屋正平氏
■クルーズ船で来日する中国人乗船客にここ一年変化が見られ、爆買いが下火になっている。この変化を名古屋にとって良いチャンスと捉え、セントレアや周辺の観光地と連携を図ってクルーズ誘致を進めていきたい。
基調講演 クルーズの魅力・動向、寄港地に求められる取組

日本クルーズ&フェリー学会
事務局長 池田良穂氏
■日本人のクルーズに対する間違ったイメージ(高い、長い、退屈、堅苦しい)が抜け切れていない。これが日本でクルーズが苦戦している理由の一つ。本当は、気軽で、お買い得で、楽しくて、便利な旅。
■現代クルーズは、定点定期(毎週同じ曜日に同じ港を出港)、短期(1週間以内)、リーズナブルプライス(1泊100ドルから)
 年収3万ドルの人からがターゲット。
■7万トン、2000人乗りの客船が同じ港発着で年間を通して1週間のクルーズを行うと、経済波及効果 起点港200億円/年、寄港港20億円/年
■名古屋におけるクルーズ誘致への提言
(1) 東アジアクルーズの現状分析と将来予測が重要
ソースマーケットはどこか? どんなクルーズに需要があるか? 将来的にはどうなるか?
クルーズビジネスの変化は?(インターポーティング(各寄港地でお客さんが乗船してくる)の影響)
(2) 誘致のターゲット設定をすべき
寄港地誘致か、起点クルーズ船誘致か?
ラグジャリー、プレミアム、カジュアル?
地理的特性の把握
観光資源のクルーズ客へのアピール性の分析
ブランドの活用
(3) 地域連携が必要
(4) 地域のクルーズマーケットの育成
名古屋港における取組報告 クルーズ船誘致に向けた名古屋港の取組

国土交通省中部地方整備局
名古屋港湾事務所 所長 池田哲郎氏
■全国港湾へのクルーズ船寄港が増加傾向にある中、名古屋港への寄港は横ばい。2016年は3隻6回の寄港。
■乗客・乗員に向けたおもてなしとして
名産品の販売、お出迎え・お見送りイベント、観光情報提供、シャトルバス運航、ボランティアによる通訳、日本文化体験ブース、無料WiFi
■地域を巻き込む取組
パンフレット、SNSを用いた情報発信、休憩・情報提供ブース
■乗員に向けたおもてなし
学生ボランティアによる市内観光案内
パネルディスカッション 魅力ある名古屋港を目指して
■コーディネーター
名城大学人間学部
教授 水尾衣里氏
■パネリスト
名古屋港の未来を考える会
委員大竹由紀子氏
名古屋商工会議所
理事・企画振興部長 田中豊氏
ツアー・ステーション
取締役 加藤裕子氏
■大竹氏
◇市民の立場から名古屋港に賑わいを持たせたい。一般市民には情報が届いていない。
◇見て、体験し、学べる名古屋港を目指したい。築地市場のように内から見られる名古屋港。一般市民への開放。移動手段の提供。
◇食で攻める。名古屋の食をチャーター便で巡回する。堀川クルーズで名古屋城まで遊覧。
◇行政は直ぐに人が入れ替わる。市民の想いを継続して行政に伝えていくことが必要。
■田中氏
◇名古屋港は知名度が低い。定期的、継続的な情報発信が必要。
◇クルーズ船で来訪する乗客の情報が直前まで得られない。どこの国から、何人。
◇日本酒、酒蔵を巡るツアーの開催。
◇周辺都市を巻き込んでツアーレパートリーを広げる。愛知県各市の商工会議所に観光担当者を置く。
■加藤氏
◇寄港地として輪島港の人気が高い。大漁旗が旗めく漁船の出迎え、見送り。数百〜数千人にもおよび市民の見送り。
◇客船が居ても、居なくても、立ち寄れる魅力ある港になってほしい。
◇製造業の拠点であることを魅力にできないか。
ふなむしの感想
◇パネルディスカッションでの熱い議論を期待したが、各パネリストが持論を述べたのみで、パネリスト間のやりとりがなく残念。
◇乗船客、乗員の満足度向上なのか、迎える市民の賑わい向上なのか、焦点が定まっていなかった。
◇「どんなお客さんが乗っているのか」港に情報が届いていないのにはびっくり。

これまで幾つかの客船に乗船、寄港地を訪問した経験からふなむしが寄港地としての名古屋港へ期待することを記します。 また、名古屋港の近隣に住んでいる市民の立場から、名古屋港への期待を記します。

!!乗船客の立場で!!
クルーズ船寄港地としての名古屋港への期待
私の寄港地の評価項目は以下の順番です
@下船(入国)、乗船(入国)がスムーズな事
Aショアーエクスカーションが魅力的である事
B港のアクセスが便利である事
○選外:歓迎行事が素晴らしい事

@下船(入国),乗船(入国)がスムーズな事
客船が好きで乗っているのに、港に着いたら直ぐに上陸したくなります。
寄港時間は限られており下船に時間が掛かると、観光時間が短くなってしまいます。これは乗船客共通の思いでしょう。
名古屋で入国審査がある場合はなお更です。入国検査で長時間待たされたら、それだけで名古屋港の評価はガタ落ちです。

Aショアーエクスカーションが魅力的である事
不慣れな場所で公共交通機関を使っての観光は、移動に時間が掛かって、効率的に観光ができません。
特に寄港時間が限られている場合は、船会社の提供するショアーエクスカーション(寄港地観光)に頼らざるを得ないことが多いです。
しかし日本の各港のショアーエクスカーションは見物型がほとんどで選択肢が少なく、魅力に欠けます。
体験型、拘り型のエクスカーションの充実を期待します。

例えば体験型なら
・常滑で陶器を作るツアー
・鳥羽で真珠のネックレスを作るツアー
※伊勢・志摩への陸路である東名阪自動車道は渋滞必須なので, 金城ふ頭から高速船を利用した海路も検討の余地があります。

NHKブラタモリが好きで毎回見ています。この番組を見るとその土地に行ってみたくなります。ブラタモリの様な拘りのツアーは組めないでしょうか。
・歴史・地理の専門家とそぞろ歩くツアー
名古屋城、堀川・七里の渡し、伊勢神宮、岡崎城・八丁味噌

物づくり日本一の愛知県を知るツアー
・自動車ができるまでを体験

B港のアクセスが便利である事
ショアーエクスカーションを利用しない乗船客には、情報とアクセス手段の提供が必要です。
港のブースで情報を提供するのでは遅すぎです。船内でじっくり検討できるように、船内で資料入手できると親切です。
名古屋港の担当者が前港から乗り込んで、案内用のデスクを持てたらもっと良いでしょう。

港から最寄りの駅までのシャトルバスは最低限必要です。
観光ポイントを巡回してくれるシャトルバスがあったらもっと良い。便利であったら有料でも構いません。

岸壁でレンタカーが借りられたら便利です。レンタカー会社との連携、岸壁の駐車スペースの確保が必要です。

○選外:歓迎行事が素晴らしいこと
港での出迎え、見送り行事はあくまでおまけで、重要とは感じません。プラスαの評価を得る手段と考えるべきと思います。
しかし、せっかく歓迎行事をやるのなら、効果的にやるべきです。

乗船客がどんな人かを事前に知っておくことは重要です。今回のパネルディスカッションでその情報が得られていないと聞いてびっくり。
歓迎行事には幾つかのレパートリーを用意しておいて、乗船客に合わせた出し物の選択が必要です。
日本人客がほとんどなのに、"ハロー" "ニーハオ"では意味がありません。
また、前後の港がどんな事をしているのかのリサーチも必要です。和太鼓演奏は日本の港の定番で、他の港と演目が被る事が多いです。

もっと重要なのは、歓迎行事を何時やるかです。
岸壁で出迎える人、見送る人にとっては、入港(着岸)、出港(離岸)のタイミングは、クライマックスですが、乗船客にとっては、必ずしもそうではありません。

入港時
ツアーに出かける人は、既に船内の集合場所に集まっているかもしれません。
パスポートを受け取る列に並んでいるかもしれません。

18:00出港のケースが多いですが、その時間には、夕食が1回目の乗船客は夕食が始まっています。
夕食が2回目の乗船客は、シアターでミュージカルショーを見ているかもしれません。

せっかく歓送迎行事をしているのに、見ている乗船客の数が少なくては意味がありません。
予め船内のスケジュールを入手して、効果的な時間に実施することが重要です。
!!近隣市民の立場で!!
名古屋港への期待
@こんなイベントがあったらうれしい
客船の寄港は華やかですが、貿易高日本一を支える貨物船をもって知りたい、知ってもらいたい。

こんな見学会があれば是非参加したい。
・輸出用の自動車はどうやって港まで運ばれて、どの様に自動車運搬船に積み込まれるのか?
・製鉄所に接岸している貨物船は、何処の国から何を運んできたのか?
・コンテナふ頭の巨大なクレーンはどうやってコンテナを積み下ろししているのか?

ところが、貨物船(コンテナ船、自動車運搬船)が停泊し、生きた名古屋港が見られるのは名古屋港の南側で、
水族館やガーデンふ頭からは遠く離れています。
金城ふ頭行きの水上バスに乗るのと貨物船は見られますが、安全の為船から離れて航行し、近くに寄ってくれません。
もう少し貨物船に接近してくれるとその大きさだけでも感じられます。

Aガーデンふ頭改造計画
昼間水族館は賑わっているのに、ガーデンふ頭全体には広がっていません。水族館が閉館してしまう夜は寂しいです。
ガーデンふ頭東部ではイタリア村跡地の再利用計画が進められていますが、西部の水族館との間は巨大な駐車場で分断されています。

駐車場を東部に移動させ、商業施設を西部と中央部に集中させる大胆なレイアウト変更はできないでしょうか。
水族館東側の船溜まり周辺をフィッシャーマンズワーフ風に改造できたら、人が集まるかもしれません。

将来、レストラン船がここから出港していったり、
堀川経由、納屋橋、名古屋城行きの屋形船や中川運河の閘門経由ささしま行きの水上バスがここから発着すれば素晴らしい