日本クルーズ&フェリー学会講演会(2018)
(2018/11/23)



過去の「日本クルーズ&フェリー学会」の講演会概要


日本クルーズ&フェリー学会の総会と講演会が神戸海洋博物館ホール(神戸港メリケンパーク)で開催され116名の参加者がありました。講演終了後、ポートタワーホテルに移動して懇親会(62名出席)が開催されました。

■講演会

講演内容(要約)
パネルディスカッション:クルーズマーケット

川崎智也(東京工大),西村壮介(ニュージェック),石原洋(みなと総研),池田良穂(大阪経法大)
コーディネーター:赤井伸郎(大阪大学)
(1)中国のクルーズマーケットの現状と未来
■今後の成長
・急成長期が終わり、安定成長期に移行
・今後は年率10~15%の成長を予想。2030年のクルーズ人口1000万人
■チャタークルーズから個人旅行へ
・チャタークルーズの問題点
供給過多→価格ダンピング・無料OPツアー→免税店巡り(チャーターラーへのキックバック)→
乗船客の満足度低下→乗客数減→クルーズ船社の収益悪化。
・ビジネスモデルの転換
船社の自主販売による販売体制強化。グルーズ日程の多様化。寄港地観光の高質化。
・その他問題
中国政府がアメリカ船社に対して直接販売を制限している。
■国(中国政府)を挙げてのクルーズ振興
・充実したクルーズターミナル整備。国内クルーズ船社の育成。クルーズ船の自国建造。
■日本の受け入れ態勢強化
・多様な寄港地観光の提供。
・岸壁、客船ターミナルの整備(費用対効果を鑑みた)。
・中国人客のマナーと市内混雑(オーバーツーリズム)への対応。
(2)日本籍カジュアルクルーズ客船の実現に向けて
■日本発着クルーズの将来予測
・2030年:168万人。カジュアル船は外国船籍船が占有する見込み。
■日本籍船のメリット
・船価が高く造船所のメリット大きい。利益率が高く船社のメッリト大きい。
■クリアすべき規制
・JG認定品の使用によるコストUP。運行管理者の資格。
■誰が出資する
・所有会社と運航会社が異なるのは貨物船では当たり前。
・外国の船社により日本籍船運航も考えられる。
クルーズ客船と災害、客船の安全性
(1)クルーズ客船と災害
天災発生時のクルーズ船の対応

山口直彦(商船三井客船) 
■国際海運で遵守する4本の柱
SOLAS(人命の安全),STCW(船員の資格),MAROL(海洋汚染防止),MLC(海事労働)
■クルーズ船の意思決定手順(天候、海象による日程、寄港地変更)
(1)情報収集
・公的気象情報(気象庁、米海軍、ウエザーニュースなど7つのソース)
・個別契約先(気象予報サービス)からの情報
・MOL SOSC(安全運航支援センター)、僚船からの情報
・代理店、港湾当局の情報
(2)意思決定の権限
・船長判断の優先。運行管理者等によるサポートを充実させて船長を孤独にさせない。
(3)情報開示、乗客・関係者への連絡
・船内放送、船内新聞、旅行会社への連絡、留守宅への連絡、寄港地当局への連絡
(4)代替手段、今後の予定
・代替エクスカーションの手配。今後の予定をHPへ掲載
■2018年の例
・8/7館山花火クルーズ
悪天候で花火大会が中止。クルーズを中止(乗客のキャンセル料不要)し、希望者に代替クルーズを運行(乗客の2/3が参加)。
・9/6北海道胆振東部地震
船および下船港(小樽)に被害はなかったが、空路・JRの不通により乗客が港に来れないため次航を中止。
小樽下船客の帰宅の足確保のため、小樽→青森を特別運航。
(2)客船の安全性
旅客船の避難解析について

口木祐介(三菱造船)
■IMOの最新規則
船の設計段階にて避難解析を行い、安全性評価を行うことを義務付け。
対象:2020/1/1以降起工する乗客36名以上の国際航路の旅客船。
■三菱造船の解析ツール
・マイクロスコピック手法を採用
各個人の特徴(歩行速度や判断力)を定義し、時刻歴で個々人の避難をシミュレートする。
・避難シナリオの設定
避難者の滞在場所分布。避難者属性。避難誘導経路。
・最適避難経路の計算
様々なパターンの計算から全体の避難時間が短くなる経路を特定。
■避難解析ガイドラインの問題点
現状のガイドラインは、煙や熱による避難速度の低下や、浸水による船体の傾斜が考慮されていない。
練習船深江丸を実際に傾斜させて、避難実験を実施した。
■避難解析ツールと組合わせた避難誘導システムの考案
システムの処理手順
・船内状況の情報取得(エリア毎の滞在人数、火災・浸水・傾斜状況)
・リアルタイムに避難解析
・最適避難経路に乗客を誘導
長距離フェリー開設50周年記念
(1)長距離フェリー50年の歴史

佐々木正美(新日本海フェリー)
■長距離フェリー(航路300Km以上)の現状
・現在14航路。航路の改廃が激しかったが最近は一定。
・インバウンド誘致のため、Japan Ferry Passを販売。
■フェリーの歴史
・日本最初のフェリー航路:1934(昭和9)北九州若松~戸畑(400m)。
・阪九フェリー以前の最長航路:宇品~三津浜(70Km)。
■阪九フェリー誕生
・トラックの動態調査実施(1965(昭和40))
神戸須磨浦公園と関門トンネル出口でトラックの走行台数を測定。
・1968(昭和43)フェリー阪九就航、神戸~小倉(452Km)。
初航海復航(小倉→神戸)でエンジントラブル発生。
(2)パネルディスカッション:長距離フェリーの現状と未来

坪井伸夫(フェリーさんふらわあ),佐々木正美(新日本海フェリー),長友秀文(宮崎カーフェリー),池田良穂(大阪経法大)
コーディネーター:坪井聖学(海事プレス)
■長距離フェリーの現状
(さんふらわあ)
志布志航路に新造船就航。
単なる交通手段・物流から非日常の体験へ。個室が8割、パブリックスペース2.5倍。
集客好調。「西郷どん」の効果大きい。
(新日本海)
創業者の客船事業重視の意思を継承:各船でグリルを営業。
斬新な事を取り入れる社風:25ノットの壁を越える30ノット超船の就航。
北海道胆振地震の影響は大きい。
(宮崎)
ドライバーの乗船比率が高く、ドライバールームの充実。
大阪から神戸に乗り場を変更し、徒歩客に便利になった。
■フェリーの今昔変化
(さんふらわあ)
志布志航路は全個室にシャワー設置。スイート客室は販売直後に満室。
(新日本海)
個室が長距離フェリーのスタンダードになった。
昔は大部屋で車座になって宴会していたが、団体客も新造船の個室を支持。
(宮崎)
二等大部屋の需要がまだある。
■外国人対応
(共通)
外国人客少ない。英語の表記、アナウンスを実施。
(さんふらわあ)
来年のラグビーW杯(大分)に向け外国人対応充実を検討中。
マナー問題についてイラストで注意喚起。
(新日本海)
阪九フェリーは韓国人の利用がある。
(池田)
レストランの多様化が必要。(フルサービス、ビュッフェ、カフェテリア、スタンド等)
欧米人はフルサービスを好む。
フェリーでも外国人船員の雇用検討が必要。
■トラックドライバーの変化
かつては食堂で一升瓶で酒を飲んで騒いでいたが、昨今は目立たない存在。
自前のシャンプー、ボディーソープを手に提げているのがトラックドライバー。
(さんふらわあ)
ドライバールーム全室個室。
シャシ率UPにより荷役に時間が掛かっている。
(新日本海)
シャシ率80%越え。
ドライバー専用レストランを設置。ビール、食事が若干安い。
頻繁に乗船するドライバーは一般レストランでは飽きるので、常連を考慮したメニューを提供。
(宮崎)
有人率が高い。ドライバーを大事にしたい。
■災害対応
(さんふらわあ)
緊急性のある物資輸送とそれ以外をどの様に扱うかが悩ましい。
(新日本海)
東日本震災では、北海道の自衛隊を東北地方へどう輸送するかが最大の課題だった。
北海道胆振地震では、発電設備の輸送需要が大きかった。
(宮崎)
定期航路船の法的縛りにより他の港に自由に入港できない。
熊本地震では、電源設備の輸送多かった。
7月西日本豪雨では、宅配便の輸送が多かった。
クルーズの受け入れ
クルーズベイ大阪湾を目指して
(1)基調講演:神戸港の紹介

田中誠夫(神戸市みなと総局)
■客船ターミナルの現況
◇第四突堤ポートターミナル
・1970年供用開始
・2014年大規模改修:耐震補強、大型客船対応ボーディングブリッジ新設。
・2017年22万トン客船対応:防舷材、係船柱等の整備。CIQブース拡張6→16。駐車場拡大。
◇中突堤旅客船ターミナル
・1995年共用開始
・2006年外航ターミナルとして利用開始
・2015年7.7万トン客船対応:桟橋延長。
■クルーズ船受入環境整備
元町・三ノ宮方面にシャトルバスの運行。深夜シャトルバスの運行(クルーの利用を想定)
■神戸空港を利用したフライ&クルーズの取組み
神戸発着のクルーズで多い時には、80人が神戸空港を利用。
(2)パネルディスカッション:クルーズベイ大阪湾を目指して

大阪港:田中利光(大阪市),神戸港:田中誠夫(神戸市),堺泉北港・阪南港:戸田功(大阪府),姫路港:雨宮功(兵庫県),みなと総研:石原洋
コーディネーター:池田良穂(大阪経法大)
近い将来、神戸港、大阪港だけでは賄いきれない数のクルーズ船が来訪する期待がある。今から準備しないと間に合わない。
■各港の現状と将来
(大阪港)
年間クルーズ客船50隻が入港。USJと海遊館が隣接する立地の良さ。航路に橋がないのも利点。
入港料、使用料、給水料を免除するインセンティブを導入。
老朽化した天保山客船ターミナルの整備を計画中。
素通りされないようなエクスカーションの充実が課題。
(堺泉北港・阪南港)
日本籍船の寄港実績積み上げ中。外国船の寄港実現を目指す。
(姫路港)
年間1~2隻が入港。既存ターミナルが活用できておらず、リニューアルを計画中。
(神戸港)
受け身ではなく、フライ&クルーズなど新しい事にも取り組む。
(みなと総研)
ウォーターフロントについて、もう一度考え直す時期。
港湾料等はしっかり取って、背後のサービスを充実させることにより船社へのメリットを出すべき。
東京湾の寄港数が急上昇しているので大阪湾の各港も東京に負けない様に頑張ってほしい。
フェリーの乗り場の改善も課題。
■大型船入港に対する港の規制
安全基準を下げるための情報収集が不足。
日本国内に知見者が少ないのが問題。


2018年乗船記へのリンク
トップページへのリンク