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神戸の海洋探究ツアー
知の海への冒険
(2023/10/7)

神戸の海洋探究ツアー 見学場所

国内唯一の海洋分野の国際コンベンションTechno-Ocean2023開催に合わせ実施された、海洋に関連する施設を訪れるバスツアーに参加しました(参加費6900円、昼食付)
主催は一般財団法人神戸観光局です。神戸の魅力が詰まり神戸らしさを存分に感じられる特別な旅「神戸のとびら」の特選プログラムです(https://kobe-door.feel-kobe.jp/)

①みなと異人館

三宮で集合し観光バスに乗車してポートアイランド北端にある北公園に来ました。ここに建つみなと異人館を見学しました。

みなと異人館は1905年神戸・北野町に建てられたコロニアル様式の住宅で、1949年からは日本郵船の船員寮、1978年に神戸市が譲り受け、ポートピア81開催に合わせ1981年に現在位置に移築されました。2012年から神戸に本社を置くシスメックスが借受け、社内の研修会や発表会等に使用されています。

みなと異人館外観

北側 館内

庭園

②海上保安庁 測量船「平洋」

第四突堤ポートターミナルに移動し、海上保安庁の最新鋭の測量船「平洋」を見学しました。

測量船 平洋(海上保安庁)
総トン数:4000トン
全長:103m、全幅:16m
建造:2020年

平洋は各種機器を用いて海底の地形を測定します。他に海底の堆積物や地質構造の調査、海水の温度、塩分濃度、溶存酸素量、海流の流れの測定も実施しています。

平洋の推進機はスクリューが360度回転するアジマススラスタです。船首のバウスタスターを併用することにより、精度良く船を進ませることができ定点に留まることもできます。

ブリッジ見学

海上保安庁の船なのでエンジンテレグラフの速力指示は日本語です。強速、原速、半速、微速、最微速

主機操作盤 音波探知で測定した海底の地形

ブリッジから後方を見る

平洋の大きなマストには通信や観測用と思われる沢山の機器が取り付けられています。

後部デッキ 大きなマストにUW2旗(Welcomeの意味)

後部デッキには多くの観測機器とそれらを海面に下ろしたりデッキに引き上げたりする装置が設置されています。

本船が近づくことが危険な海底火山などは、USV(無人高機能観測装置)を使用して無線通信による遠隔操縦や事前プログラミングによる自動航行で調査を行います。

USV(無人高機能観測装置)

AUV(自律型潜水調査機器)は事前にプログラミングされた経路を自律航行し海底地形などを調査します。本体のほとんどは電池の搭載場所で閉められ16時間以上(機種により異なる)連続で航行できます。

AUV(自律型潜水調査機器) CTDシステム(水温塩分測定装置)

AUV投入回収装置 CTD用巻揚機、コアラー用巻揚機

船内の一部も見学できました。医務室はありますが医師は乗船していません。

船室 医務室

平洋の隣には神戸大学の練習船「海神丸」が停泊していました。海神丸は2022年に建造された最新の練習船です。

練習船 海神丸(神戸大学)

神戸市の公務艇「きくすい」が警戒任務に就いていました。

公務艇 きくすい(神戸市)

③レストラン ジョリポー(神戸学院大学)

このバスツアーには昼食が付いています。神戸学院大学内のレストラン ジョリポーで取りました。神戸ポートピアホテルの経営で昭和時代の学食とは異なり、綺麗なレストランです。

この場所は2002年7月まではコンテナバースとして使われていました。ポートアイランド西地区のコンテナバースは初期に建設されたバースでコンテナ船の大型化に対応できないため廃止され、その跡地に複数の大学のキャンパスが建設されました。

レストラン入口

食べたメニューは本ツアー限定特別ワンプレートランチ(1500円相当)です。美味しく頂きました。

牛肉と豚肉のミンチ、マッシュポテトとチーズのオーブン焼き
サラダとミニカップスープ
スフレチーズケーキとバニラアイス盛り合わせ

④神戸水素CGSエネルギーセンター

技術研究組合 CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)は、水素をエネルギーとして利用するための「つくる」「はこぶ」「ためる」「つかう」のサプライチェーンが一つにつながるモデルケースを示す実証実験を行っています。神戸水素CGSエネルギーセンターは水素をエネルギーとして「つかう」を実証する施設です。

水素焚きのガスタービンエンジンの発電装置を見学しました。1000KWの出力で発電と同時に発電時に発生した熱の供給も可能です。水素は燃焼温度が高温になるので、装置の焼損防止や燃焼で発生するNOxの削減が重要です。従来からある水を噴射して温度を下げる方法は発電効果が下がる欠点があります。この装置は「ドライ低NOx水素燃焼技術」という新しい方法を採用し、NOxの発生を抑制し同時に発電効率も高く維持しています。この発電設備は水素とLNGの混合燃焼が可能で任意の割合で混合して燃焼できます。LNGはパイプで供給され、液体水素はタンクローリーで供給されています。

川崎重工ではエアバス社と共同で航空機用の水素エンジンの研究も進められています。

水素焚きのガスタービン発電装置

⑤神戸液化水素荷役実証ターミナル

神戸空港島の北東部にある神戸液化水素荷役実証ターミナルは、水素をエネルギーとして利用するための「はこぶ」と「ためる」を実証する施設です。

オーストラリアの褐炭で造られた水素は-253℃に冷やして液化水素にされ、川崎重工が建造した液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」でオーストラリアから神戸まで運ばれます。神戸液化水素荷役実証ターミナルはこの液化水素を荷揚げ・貯蔵する施設です。

施設内の貯蔵タンクは直径19mで2500KLの容量があります。球形真空二重殻で外部から冷蔵しなくても低温が保たれます。施設内のパイプ類も全て二重殻でできていて保温材などは撒かれておらずパイプは剥き出しです。パイプの内部は低温でもパイプの外側は常温で霜が着くことはありません。もし着霜が見られたら水素が漏れている証です。もし水素が漏れたとしても軽い水素は直ぐに拡散してしまうので爆発などの危険な状況の可能性はほとんどありません。

施設内は撮影禁止です。機密のためではなく静電気による発火を防ぐためです。しかし実際には発火の可能性は低く、安全を最優先するがための処置です。

神戸液化水素荷役実証ターミナル

➅Techno-Ocean 2023(神戸国際展示場)

Tecjno-Ocean(テクノオーシャン)は国内唯一の海洋分野の国際コンベンションで2年毎に神戸で開催されています。震災前は造船関係、震災後は港湾建設、そして現在はSDGsに関する出展が多いとのこと。私は海中ドローンなどの海中を対象にした出展が多い様に感じました。

Techno-Ocean2023は、2023年10月5日(木曜)~7日(土曜)に開催され、有料の講演会、パネルディスカッション、無料のセミナー、プレゼンテーションが開催されました。
展示会場では出展企業、団体がブースを設けて製品や技術の展示、説明を行っていました。また隣接するポートアイランドスポーツセンターでは水中ロボットの競技会が開催されていました。
私は幾つかのブースを訪問しました。詳しい説明を聞けて最先端技術の一端を勉強できました。素人の質問にも丁寧に説明してくれました。

空を飛び、海に潜ることができる
「水空合体ドローン」
固定翼無人飛行艇

AUV(IHI)

⑦マリンタクト神戸(海上保安庁 大阪湾海上交通センター)

ポートアイランド南西端にある海上保安庁 大阪湾海上交通センターを見学しました。2023年3月に淡路島からポートアイランドに移転し、その際公募で愛称が「マリンタクト神戸」に決まりました。「海上交通センターが船を正しく導く様子をオーケストラで指揮者がタクトを振る姿と捉え、”航路のハーモニー“を奏で続けてほしい」の願いが込められています。

マリンタクト神戸
(大阪湾海上交通センター)

屋上に上がると見晴らしの良い眺望が見られます。塔の上にはレーダーやアンテナが設置されているので障害物に遮られない見通しの良い場所に建設したものと思います。すぐ南に神戸空港があるので、塔の高さは神戸空港の高さ制限(標高約50m)ギリギリの高さになっています。

屋上の塔

大阪湾海上交通センターの機能は淡路から移転しましたが、レーダー設備は今も稼働しており明石海峡大橋の左側に塔の先端が見えました。

東側 神戸空港連絡橋 西側 明石海峡大橋

マリンタクト神戸では大阪湾の安全を確保するため、海の管制官が24時間体制で船舶の安全に必要な情報提供と航行管制を行っています。職員は約70人です。1/4~1/5が女性でその比率は増えているとのこと。

管制室を見学しました。ここは撮影禁止です。
中央の大きなパネルにはレーダーやAISで捕捉した大阪湾・明石海峡を航行する船が地図上に表示されていました。その両側に大きなTVモニターが沢山並んでいて大阪湾、明石海峡および各港の監視カメラが写す船舶の生映像が表示されています。
管制室の左側は明石海峡、右側は神戸港や大阪港を担当する管制官のデスクがあってその上にもモニターが並んでいます。

管制業務

大阪湾海上交通センターの神戸移転(マリンタクト神戸の稼働)と同時に大阪湾海上交通センターが機能強化されました。
(1)レーダーサービスエリアの拡大
(2)大阪港(阪神港大阪区・泉北北区)、神戸港(阪神港神戸区)の港内管制を大阪湾海上交通センターで統合運用 (明石海峡は従来から大阪湾海上交通センターが管制)
(3)拡大された情報聴取義務海域における情報提供

レーダーサービスエリアの拡大 情報聴取義務海域の拡大(情報提供海域の拡大)

大阪湾海上交通センターの機能強化により神戸港の港内管制も統合されるので、神戸港から明石海峡に向かう船では「こうべポートラジオ」「こうべほあん」「おおさかマーチス」に分かれていた国際VHFによる通報先は「おおさかマーチス」に統合されます。


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