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ふなむしのひとりごと(2021)


■コロナなのに何故に飛鳥Ⅱは釜山に行くの(5/27)

昨年11月2日からクルーズを再開した飛鳥Ⅱですが、4月29日に横浜を出発したクルーズで乗客の一人の感染が発覚し、再び運航を停止してしまいました。今日(5/27)現在、乗客の検査方法(PCR検査など)の見直しのため6月末までのクルーズ中止が決まっています。

そんな状況下にも拘わらず、飛鳥Ⅱは釜山に居ました。

釜山に接近 釜山沖からUターン

飛鳥Ⅱは韓国の領海内に入って釜山港の位置通報ライン(入港する船が釜山港当局に無線連絡する地点)を越えた後、釜山港に入港接岸することなくUターンしたみたいです。

新型コロナの影響で運航を停止しているハズの飛鳥Ⅱが何故遠距離航海をして、しかも外国の釜山に近づいたのでしょうか?

日本籍クルーズ客船に課せられた60日間規制

飛鳥Ⅱは日本船籍にも拘わらず、日本国内の運航は連続60日間以内と定められています。それを越えないように海外に向け出港する必要があります。
通常は国内クルーズと外航クルーズのスケジュールを上手く組み合わせることによりこの規制に抵触しないようにしていますが、現在は国内クルーズのみ運航しています。そのため乗船客を乗せずに海外まで航行する必要がありました。
※乗船客に感染者が出たため国内クルーズも7月末まで中止

この規制は飛鳥Ⅱに外国人船員を乗船させる見返りに課せられた規制です。

日本籍のクルーズ客船はマルシップ?

日本船籍船の船員は日本人に限定されていますが、マルシップの場合は例外です。

マルシップとは「日本法人等が所有する船舶(日本船舶)を、外国法人等に貸渡し(裸用船)、当該外国法人が外国人船員を乗り組ませたものを、貸渡人たる日本法人等がチャーターバック(定期用船)したもの」です。
マルシップであれば日本船籍船でも外国人船員の配乗が可能です。まるで法律の抜け道を利用した様なやり方ですが多くの船会社がこれを利用しています。

海外貸渡し方式(マルシップ)客船の国内航路混乗

マルシップへの外国人船員の配乗許可はあくまで外国へ航海する外航船に対する特例ですが、マルシップの客船であれば国内航路を運航中でも外国人船員の配乗が可能です。但し以下の条件が付けられています。

①対象
外航輸送と次の外航輸送の間の短期間に限定。短期間とは日本の港に初めて入港した後、再び日本外の地域に出港するまでの期間が60日以内の場合。
②外国人船員
・労使合意により、運航部員と主としてサービス業務に従事する船員に限定
・配乗員数などを含む具体的配乗要件は、労使合意が前提

条件は何度か緩和されていて、「短期間」が30日間→60日間になったり、対象船員がサービス業務要員のみだったのが、運航部員が追加対象となったりしています。

無意味な釜山詣は続くのか?

コロナ禍で運航停止している期間は釜山詣を免除すれば良いのにと思うのですが、お役所はそんなに甘いものではなさそうです。

混乗の規制緩和は日本外航客船協会を中心に政府に要望してきた事ですが、30日間(1991年)から60日間(2015年)に規制緩和されるのに24年間掛かっています。他には日本船籍船での公海上でのカジノ自由化の要望を出しているようですが、これも簡単には叶えられそうにありません。

※終わりに
このコンテンツは「日本船籍船の船員は日本人に限定している」を前提にして書いてきましたが、それを明文化した法律が見つかりません。ネットで検索していると国土交通省の資料の中に「外国人船員を配乗しないように行政指導を行っている」と文章があり、意外に法律に裏付けされた強固なルールではないのかもしれません。


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