日本クルーズ&フェリー学会 講演会 (於:大阪府立大学) |
日本クルーズ&フェリー学会の講演会が開催されました。 70人を超える参加者でした。
講演内容(要約) |
(1)東アジアにおける現代クルーズの成長 |
@現状とその将来 池田良穂(大阪府立大学) |
日本のクルーズマーケット開発 @外国船による日本発着クルーズ:RCI、日本の旅行会社のチャーター A外国船による日本発着で日本を巡るクルーズ:プリンセス ・外国人にも人気、日本の地方都市を回れるクルーズ Bインターポーティング日本寄港クルーズ:コスタクルーズ ・RCIは日本人と中国人の混載には消極的 C日本籍クルーズ客船への影響 ・メリット:全体的なマーケットの拡大、日本船の予備軍を増やせる ・デメリット:価格差による日本船乗船客の減少 ・2013年はメリットの方が表れている。 |
Aプリンセスクルーズのアジアクルーズ 泉 隆太郎 (カーニバルジャパン大阪事務所) |
2013年のクルーズ ・10万トン客船では集客に不安。3万トンでは採算とれない。結果7万7千トンのサンプリンセスに決まった。 ・60才以上82.35%、50才〜59才8.53%。GWのクルーズは家族連れで若い世代の乗船もあったが、その他のクルーズは高齢者が多かった。高齢者予備軍の乗船は少なかった。 ・乗船客の6割が外国客船が初めて。 ・外国人の集客は良かった。日系人の乗客、ロシア人の乗客も多かった。 2014年の予約は好調。 ・大都市在住者の予約は早く、地方都市は遅い。クルーズに対する知識の違いが現れている ・ダイヤモンドプリンセス、サファイヤプリンセンスは就航10周年にあたり、記念イベントを考えている。サンプリンセスを含め3隻が集まる。 ・関東、関西でCMを多く流している。今は投資の時期。 旅行会社対策 ・乗船客の外国船についての知識が少なく、小規模旅行会社に対するクルーズ教育が重要。 ・クルーズアドバイザー制度は一定の効果はあるが、会社からの指示による取得が多く、積極的でない。 |
Bロイヤルカリビアンの東アジア戦略と日本発着クルーズ 糸川 雄介(ミキツーリスト) |
インターナショナルマーケットの強化 ・ロイヤルカリビアンの2007年のマーケットは北米:その他=7:3であったが、2011年は北米:その他=5:5となった。 ・アジアのクルーズマーケットは140万人(中国80万、日本20万)、2020年には、400万〜1000万になると予想。 日本発着クルーズ ・2010年 レジェンド 3600人、2012年 レジェンド 14000人 2013年 ボイジャー 9000人。 販売施策 ・全てのクルーズはインターナショナルで販売するが、日本人と外国人の船客の割合を考慮して集客 ・日本発着クルーズの料金は固定制だが、近い将来変動制に移行と予想。 |
Cホーランドアメリカライン、コスタクルーズとアジアマーケット 久野 健吾 (オーバーシーズトラベル) |
ホーランドアメリカラインのクルーズ ・リピータ率が高い(100%リピータのクルーズもあり)。10万トン以上の客船は作らない。 ・カリブ海のプライベートアイランド(ハーフムーンケイ)は人気ランキングトップ。 ・日本発着クルーズの予定はない。 コスタクルーズ ・乗船客の年齢 〜34才:28%、〜44才:14%、〜54才:18%、〜65才:19%、56才〜:21%、 ・小型客船(4〜5万トン)のネオシリーズ就航、特色を持ったクルーズ。ワールドクルーズは130万円から、予約が取りにくい。 ・ヨーロッパのクルーズは、公用語5ヶ国語、言葉の壁のないエンターテイメント。 |
DHISグループのクルーズ戦略 小林 敦(クルーズプラネット) |
クルーズプラネットはHISのグループ会社としてクルーズを専門に取り扱う。チャータークルーズと日本発着クルーズはHISでも販売。 2013コスタビクトリアのチャータークルーズ ・14000人を集客。 GWのクルーズは成功だったが、夏のクルーズはそうでもなかった。 人気間違いなしと思ったクルーズが不人気であったりして予想が難しい。 ・クルーズ初めての乗船客が59%。 年齢は70代26%、60代31%、50代13% ・アンケート調査結果からは必ずしも満足度は高くなかった。「日本発着クルーズなら次回乗船」の答えが多かった。 2014年のチャータークルーズ ・コスタビクトリアとフォーレンダムのチャータクルーズを実施。フォーレンダムは日中関係の悪化で、チャーターでないと日本に寄港しないおそれもあった。 |
(2)おもてなしの神髄を極めた日本籍クルーズ客船 |
@にっぽん丸のクルーズの魅力 山口 直彦(商船三井客船) |
差別化により外国船と共存 @食のおもてなし(有名シェフとのコラボ) ・食材費は海外船の4〜5倍 A造り込んだテーマ設定 ・船上オペラや歌舞伎上演 Bチャレンジングな航路設定と寄港地 ・小型船の特徴を活かす ・日本ではフライ&クルーズは旨くいっていない。 ・複数クルーズの連続乗船のコースを設定。 乗船客の年齢 平均63才(2012年) 男性4割:女性6割 |
Aぱしふぃっくびいなすのクルーズの魅力 東山 満(日本クルーズ客船) |
フレンドシップのおもてなし ・参加できるイベント、一緒に楽しめるイベント ・お客様と乗組員の最適な距離感を目指す 2013年のクルーズ ・外国船寄港により良い効果が出ている:上期20%UP,下期10%UP(見込み) ・台風の影響大きかった(3クルーズ) 乗船客の年齢 日本一周の場合、平均73〜74才 |
BIRクルーズ企画 下田大介、北川涼太 (電通) |
・IR=カジノを含む統合型リゾート ・クルーズは統合型リゾートの機能を持ったエンタティメントシティ ・大阪IR完成まで、クルーズシップを社会実験として活用 |
(3)クルーズ客船を迎える日本の港湾 |
@巨大客船の離着岸の実態 〜船長の何倍の港湾スペースが必要か〜 小菅 雄紀(大阪府立大学) |
大型船の出入港及び航行に拘わる規制 ・1L2L規制(航路は船の全長分必要、回頭水域は船の全長×2必要という規制) ・水先引き受け基準(風速) ・タグボートの使用基準 ・巨大船の瀬戸内海夜間航行規制 検証目的 ・ポッド推進器や高出力のスラスタを装備したクルーズ客船の操船性能の実態を把握し、それに見合った規制のあり方を提言する。 調査結果 ・大型クルーズ客船の回頭に必要なスペースは直角方向 船長の1.22倍、法線方向は船長の1.2-1.6倍 ・クルーズ客船に必要な回頭スペースは大型コンテナ船の約60% |
(4)新造客船を見る |
@LNG炊きエンジン搭載の大型フェリーの現状 6万トンのクルーズフェリー「バイキンググレース」乗船記 池田良穂、小菅 雄紀 (大阪府立大学) |
・LNGタンクを船尾デッキに搭載。 エンジンコントロール室では燃費計を表示して常に船員にコスト意識を持たせる。 ・LNGの供給は、接続5分、チャージ20分。 タンクは常に50%以上にするよう規制されていて、6回/週 チャージしている。 ・LNGの気化熱を利用して、旅客区画の空調に利用。 バイキンググレースの航路 ・スエーデンのストックホルムとフィンランドのトゥルクを結び、途中多島海(アーキペラゴ)を航行。 ・免税品販売(含む酒類)のため、EU圏外の島に途中寄港。 深夜寄港はボラードに舫いを掛けて、直ぐ外して規制をクリア。 |
(5)フェリーの省エネ化 |
@フェリーの最新技術動向について 大西克司、三好翔太 (三菱重工業) |
@三菱重工の建造実績:1987年大型フェリーの建造開始以後67隻建造、5000トン以上ではシェア70% A省エネへの取組:1987年建造船に比べ2010年は20%UP @推進効率 A貨物スペース B電力 B推進プラントの最適化:2機1軸(さんふらわあ ごーるど 船体抵抗の低減)、CRPポッド推進(フェリーはまなす 13%省エネ(対従来船)、港内操縦性能UP) C復元力回復装置:損傷時の復元性向上、貨物搭載量を減じることなく安全性を確保 |
A小型高速旅客船の実船計測と運航手法による省エネ化 平田宏一 (海上技術安全研究所) |
目的:省エネ運航、整備のマニュアル作成、小型船の設計、改良に役立つマニュアルを作成 省エネの手法、課題:@減速 A軸発電 B陸電の利用 C新技術導入 D運航状況の見える化 |
(6)世界最大客船「アリュールオブザシーズ」の印象 梅田 直哉(大阪大学) 梅田 淳子 |
万歩計で船内での動きを測定:終日航海日7100〜7900歩(にっぽん丸乗船時 11000歩)、寄港日11500〜15000歩 船内有料ツアーに参加:150$,参加者18名、ギャレー、エンジンルーム、ランドリー、ブリッジなどを見学。 ブリッジ後方に損傷時に船長が詰めるSAFETY CENTERが設置されていた。 |
(7)ユーザ視点でクィーンエリザベスを考える 堀江 珠喜(大阪府立大学) |
QEは、船客・船会社・乗組員が待望した船だった。 進水式では「この船でガッポリ稼ぐ」と社長が宣言。 乗船すると期待外れが多かった:乗船案内書類の一部省略、キャビンの調度品の簡素化・使い憎いレイアウト、カジュアル化を感じる出来事、娯楽施設のレイアウトの悪さ 女性乗船客の重要性:キュナードの上得意は女性。女性の心を宝石、和服からクルーズに向ける努力が必要。 |